夜空に二つの彗星が囁き、流れ星たちが銀の矢を放つ
――アストロアルシェ 2025年10月特集
夜空が語る物語には、いつも“再生”のサインが隠れています。2025年10月、1400年ぶりの来訪とされるレモン彗星、そして次に見られるのは2万年後とも言われるスワン彗星。その二つが同じ空に並び、天秤座新月の暗い夜に、オリオン座流星群が極大を迎えます。宇宙は、あなたの中に眠る光の記憶をそっと呼び覚まそうとしています。
I. 天文学的な奇跡――二つの彗星の接近
レモン彗星(C/2025 A6 Lemmon)は長周期彗星で、2025年10月21日前後に地球へ最接近し明るさが増す見込みです。一方、発見間もないスワン彗星(C/2025 R2 SWAN)は、10月15〜20日にかけて天の川を横切るように西の空を渡ると予想されています。
特筆すべきは、10月中旬、観測条件のよい時間帯に二つの彗星が「同じ空」に現れ得ること。片方は明け方の東、もう片方は夕方の西という時間帯の移行を経て、10月15日以降は特に夕暮れの西空が注目ポイントになります。
II. 彗星が語る“光の構造”――氷と塵がつくる尾
彗星は、氷(主に水の氷)と塵でできた“太陽系の化石”。太陽に近づくと氷が昇華してガスとなり、塵を巻き込みながら彗星の周囲にcoma(コマ)と呼ばれるかすみを作ります。そこへ太陽風や光の圧力が作用して、ガスと塵は尾として伸び、私たちの目に「光の流れ」として映るのです。
つまり、夜空に描かれる彗星の尾は、宇宙の風が残した軌跡。古い物質が形を変え、光として私たちの意識に届く“変容のプロセス”そのものでもあります。
III. いつ・どこで見える?――10月の観測シナリオ
- 〜10月15日頃:明け方、東の空でレモン彗星に注目。
- 10月15日以降:夕方〜宵の西空へ注目がシフト。スワン彗星が天の川を渡るように見えるタイミング。
- 10月20〜21日:オリオン座流星群が極大。月明かりのない天秤座新月と重なり、観測条件はとても良好。
- 10月21日:レモン彗星の地球最接近期と重なり、彗星+流星群の共演が最高潮へ。
観測は、光害の少ない場所で、空を広く見渡せる方角へ。肉眼でも楽しめますが、双眼鏡があると彗星のコマや尾の広がりがわかりやすくなります。
IV. オリオン座流星群――“記憶が光になる夜”
オリオン座流星群はハレー彗星が残した塵を地球が通過することで起こります。微粒子が大気との摩擦で燃え、光の線を描く――それは科学的には単純な現象ですが、スピリチュアルに見れば「過去に撒かれた痕跡が、いま再び光として立ち上がる」儀式のよう。
天秤座新月の深い闇は、星々の光をいっそうくっきりと浮かび上がらせます。あなたの内側でも、忘れていた記憶や思いが、新しい意味を纏って点灯していくでしょう。
V. 宇宙とあなたの調律――“光の天秤”が示す再構成
二つの彗星が空の両端に輝く光景は、まるで宇宙が光の天秤を掲げているかのよう。天秤座新月が象徴するのは、関係性や価値観の「バランスの再生」。いま葛藤や迷いがあるなら、それは新しい軌道へと導かれているサインです。
古い重さを手放し、軽やかな側へ重心を移す――そんな意図を、今夜の空に預けてみてください。彗星は、進むべき方向が“光に引かれる”感覚を思い出させてくれます。
VI. ブルースター・カチナ――ホピの言葉で読む“青い星”
アメリカ南西部・ホピ族の伝承には、転換の時代に「青い星のカチナ(Blue Star Kachina)」が現れるという予言が語られます。カチナとは、目に見えぬ世界と人を結ぶスピリットのこと。2025年10月の空に映る、レモン彗星の淡いエメラルドの尾と、スワン彗星の蒼白い輝き――それはまるで、二つの“青い星”が呼応しているかのようです。
予言の真意は“恐れ”ではなく、“調律”にあります。世界が組み替わる時、私たちの意識もまたアップデートされる。星々は、その合図を光で知らせているのかもしれません。
観測ポイントまとめ
- 10/15頃まで:明け方の東空でレモン彗星に注目。
- 10/15〜20:夕方の西空にスワン彗星。天の川を渡るような位置取りに。
- 10/20〜21:オリオン座流星群が極大。天秤座新月で月明かりなし。
- 10/21:レモン彗星の最接近期と重なるハイライト・ナイト。
夜風の冷たさに肩をすぼめたら、深呼吸を。彗星の尾は、宇宙の呼吸の可視化です。あなたの世界もまた、静かに新しいリズムへと整っていきます。






